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あるところに綺麗な綺麗なお嬢様。煌びやかな飾り付けをされたお部屋に丁寧に織り上げられた絹のドレスを身に纏う。そんなお嬢様は泣いていた。真珠のような涙を流して泣いていた。従者は皆どうして良いか分からずに幾日も過ぎていた。嗚呼なんて可哀想なお嬢様。貴女が信頼していた者達は皆役立たず。父も母も見て見ぬ振り。姉達は舞踏会へ行き、兄達は戦争に行ってしまった。そんなお嬢様の頼りは窓からやって来る翼を持った友達だけ。真っ黒な服、靴、翼、そして鎌を持っていて…瞳だけが優しい海の色。肌は黒を引き立てるかのように透き通った白だった。その美しさと言ったら……人間には得ることが出来ない程の美しさ。そして友達は謳う。美しい歌声で、まるで何かに想いを馳せているように。そうしてお嬢様は惹かれてく。この漆黒の天使の導かれるままに。
――気づけばベッドはもぬけの殻。役立たずの従者は声も出ず、見て見ぬ振りした両親は途方に暮れ、舞踏会へ言った姉達は泣き崩れ、戦争へ行った兄達は嘆き悲しんだ。けれどもお嬢様は帰ってこない。ずっとずっと長い間…一族が滅び、国が滅んでもお嬢様は帰って来なかった。居なくなった時に残した、真っ黒な羽だけを置いて―…
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