形の無い贈り物

一応学生2人の話。学生要素ほとんど無いけどね！←





「何か欲しい物ある？」
誰も居ない部室で急に言われた言葉だった。俺は数秒固まってから答える。
「……別に欲しい物はない、かも」
「何も？」
「うん…」
「そっかぁ」
少し残念そうな顔をされた。ちょっと罪悪感。
「あ、じゃあさ」
いきなり笑顔になって、ずいっと顔を近づけられた。
「な、何？」
「されたい事は？」
「されたい…こと？」
「そ、されたい事。何か無い？」
「……されたい事なら、ある…かも」
「本当?!何？何でも良いぞ」
「…ひかない？」
「ひかないひかない」
俺はじーっと見つめてくる視線から顔を背けながら口を開いた。
「…い、一緒に帰りたい」
「……はい？」
「だ、か、ら！一緒に帰りたい！」
「…」
「な、何だよ…」
「いや、可愛いなぁって思って」
そしてぎゅっと抱きつかれた。
「ずっと帰りたいって思ってたの？」
いじわるな口調で訊かれた。
「…うん」
「一応お前のためを思って帰らなかったんだけど」
「…俺のためを想うなら、一緒に帰ってほしい…」
「―――っ、本当に可愛すぎ！」
「く、苦しい…！」
締め付けられて息がしにくくて苦しかった。でも、その分暖かった。
「じゃぁこれから毎日一緒に帰るか♪お前の願いだし」
「…うん」
俺はそっと腕を静かに身体に回して、ぎゅっと力を入れた。暖かさを全身で感じて、心臓の鼓動を感じた。これが温もりなんだ…と俺は正常に動かない頭でそんな事を考えていた。