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真っ暗な部屋に入れば目の前にはベッドが1つあった。何故あるのか。簡単なことだ。此処が寝室だからだ。
そしてそこには膨らみがあった……あいつが寝ているのか?
そう思ってベッドの傍らに立った。ベッドを覗きこんでみたら案の定あいつが寝ていた。表情は部屋が暗い所為でよく見えないが、きっと気持ちよさそうな顔ですやすやと眠っているのだろう。顔を近づければ小さな寝息が聴こえる。
「……なぁ、何でこんな近くに居るのに遠く感じるんだろうな」
俺の呟きは自分でも気付かない程に自然と出ていた。そっと手を伸ばして目の前の奴の顔に触れた……ちゃんと肌の柔らかさを感じているはずなのにやっぱり孤独感は消えなかった。
「どうすればお前は手に入るんだよ……」
ただお前の近くに居たいだけなのに。俺だけを見てほしいだけなのに。俺をお前で埋めてほしいだけなのに。
何でこいつは手に入らない?何で俺だけを見てくれないんだよ……
気がつけば、俺の手はこいつの顔に触れていたはずなのに首元にあった。そのまま静かに力を込めていく……
「――くはっ…!」
苦しそうな声が聴こえた。その声の主は目の前のこいつ……ではなく俺だった。
何が起こったか分からなかったが、いつの間にか俺は奴に組み敷かれていた。
「な…?」
「おはよう……いや、おそようかな?」
妖しげな笑みを浮かべた奴が俺を見下ろしていた。
さっきまで暗かった部屋が月明かりで少し明るくなっていた。
「刺激的な起こし方だね?」
笑みを崩さずに奴は言った。
「いつから、起き、て…?」
「君が部屋に入ってきた時からだよ」
「え……」
「僕が君に気付かない訳ないだろう?僕は君しか見ていないんだから。君の事なら全て分かる。行動も言動も気持ちも……だから君はこの館に居るんだろう?」
「――っ」
「理由も無く僕が他人を同じ空間に居させる訳ない」
「で、でもっ…!」
「…君は、僕が欲しいんだろう?」
「!」
「だったら僕の全てを知るが良い。いや、教えこんであげるよ。……この何も知らない無垢な身体に、ね」
綺麗な白い手が僕の首を静かに包み込んだ。少しずつ力が入って、少しずつ呼吸しづらくなっていく。
「や…やめ…」
「やめないよ。まずは身体に教え込まなきゃ。この身体が誰の物かってことを……絶対に他の奴には渡さない」
そして首元に鋭い痛みが走った……咬まれたんだと気付いた瞬間にペロッと舐められた。
「ふぁ…っ」
「感じてるの?」
くすくす笑うこいつはライオンのように気高く、悪魔のように残酷だった。
――でもそんな奴の物に願ったのは紛れもない俺な訳で……俺はこいつの全てを受け入れた。