×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「ご主人様」
そうお呼び出来るのが…堪らなく、嬉しく感じるのは…執事として可笑しいのだろうか…。たまに不安になってしまう。
「…どうした?」
「もう昼食のお時間でございます」
私はポケットに入れてた懐中時計を見ながら告げた。
「…ああ、もうそんな時間か」
「お仕事ですか?」
「いや、仕事ではない」
「それでは一体…」
「うむ」
真剣な表情で、ご主人様は机に広げていた本を私に見せてくれた。
「っ、これは…」
……洋服についての、本…?
そう目で尋ねた。
「そう、これには世界中で人気の服が載っている。なかなか勉強になるな」
「しかしそれは女性用ですよ?…もしや、誰かいらっしゃるのですか?」
「いや、これはお前用だが?」
「……はい?」
思わず聞き返してしまった。
「だから、この本はお前のために見ているということだ」
「…あの、ご主人様」
「ん?」
「失礼ながら…私は一応男なのですが…」
「知ってるぞ?」
いや、絶対に分かってない…
「なのに何故そちらをご覧になっているのでしょう…?」
「うむ、良い質問だ」
そう言ってご主人様は、目を輝かせて宣言をする。
「この中からお前に似合う服を探そうと思ったのだ!」
嬉しいか?と目で問われても正直…
「嬉しくは…ない、かと…」
「む…」
「いえ!ご主人様の優しい心遣いには感無量です!けれど…女性用の服というのは…。確かに昔から女のようだと言われますが…」
「なら構わないだろう」
「いえ、しかし…」
「そんなに言うならこうしようではないか」
「?」
「―…命令だ」
「…っ」
「主人命令だ。従ってもらうぞ?」
「……はい」
そう言われたら反論は出来ない…
本当、どうしてご主人様は見た目はとても魅力溢れる男性なのに中身は子どもみたいなのか……私の所為なのでしょうか…
「お、これなんてどうだ?」
ご主人様が指差したところを見た。
「……ちょっと露出が、多い、かと…」
「そうか?」
「はい…」
「いや、私としてはこれくらいが…」
「ご、ご主人様…っ」
「…ん?」
「私のような、ただお仕えさせていただいてる使用人に、そのようなことはなさらなくても…あの、大丈夫です…」
「……」
「本当に申し訳ないと言いますか…」
「これは、私が勝手にしてることだ」
「ですが…」
「それに私からのお願いでもある」
「お願い…」
「ああ。私はお前の色んな一面を見てみたいのだ」
ご主人様はそう言って微笑んだ。
とても、とても綺麗な笑顔だった…
「ご主人様…」
「確かにお前は私の執事だ。だが、私にとっては違う」
「?」
「私は執事としてのお前ではなく、一人の人間としてのお前の一面を見ていたいのだ」
「……」
「…意味が分かるか?」
「なんとなく…」
何故そこまで仰ってくれるのかは分かりませんが…
そう言ったら苦笑されてしまった。
「今は…それで良い」
「え…」
「まだ分からなくて良い」
ご主人様は綺麗な表情で静かに言った。
「これからゆっくり教えてやる」
「…っ」
――…今の感情は、何なのでしょう…
分からないのは…私が未熟だから、だと思う、けれど…
「ご主人様…」
「お前は執事としては優秀だが、一人の男としてはまだまだだな」
「申し訳ございません…」
「いや、それを育てていくのも主の務めだからな」
ご主人様は紅茶を一口含んだ。
「これからに期待、だな」
私は、まだその意味を理解してなかった。
---------------
俺様主と鈍感執事の話。
あんまり俺様感が出なかったけど。
これは機会があればリメイクとか話進めたりしたいなぁ…
PR
Comment