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「お前ってさ、どんな味すんの?」
…………ぇ?
「いきなり…何?」
「別に。ただ気になったから」
いや、だからって味を気になることなんてあるのかよ…しかも興味の対象が人間…
「俺は、お前を食いたい」
「え、いや、それは勘弁、してよ…」
「何で?」
「何でって…食われたいなんていう願望を持ってる奴は居ないだろ…」
「…俺は、」
お前に食われても良いよ?
そう言った奴の笑みを見て、体に悪寒が走った。……怖い?こいつに恐怖を感じてる?俺が?こいつに?
……有り得ない。いや、有り得ないことだった。けど、その常識は今変わってしまった。
「……お前はどっちな訳?」
俺は訊いた。
「どっち?」
「食いたいの?食われたいの?どっちがお前の本心?」
「……うーん、出来るなら…」
食われたいかもしれない…
そう言ったこいつの目は、真面目だった。
「…何で?」
「ん?」
「何で食われたい訳?」
「……だって、そしたらお前の一部になれるじゃん」
「…?」
「お前が俺を食ってくれたら俺はお前の口内に入り、食道を通って胃に入る。その中でドロドロに溶かして養分になれば、お前の全身に俺が行き届く。…それって凄いと思わない?」
「……」
「でも、死にたい訳じゃないんだよ」
俺は、お前の中で生きたいだけ。
……こう言われたら、どう反応すれば良い?どう反応するのが正しい?
別にこいつの意見を否定するつもりはない。そんなの人それぞれだから…
けど、俺はどうすれば良い…?
「…ねぇ」
「ぇ…」
静かな口調に少し恐怖を感じた。
「食わないからさ、少しだけ…少しだけお前の味を知りたい」
「…食わないでどうやって味わうの?」
「噛みたい舐めたいしゃぶりたい。…とにかく、味わいたい、お前を」
「……」
こんなイカれた奴に愛しさを感じる俺も同類なのか…?
そんなことを考えていたら、いきなりバンッと押し倒された。
「…っ!」
「判断遅いよ。拒否しないのは肯定と受け取るからね?」
そう言って、舌で唇を舐める仕草をするのを見た。
それはまるで…狂犬のようだと、思う。差し詰め俺はそれを飼ってる狂った飼い主なのだろう。でも、こんな駄犬を他の誰が飼える?…そんなの考えるまでもない。
「……来いよ」
いっそのこと、お前はその欲望に身を委ねてしまえ。俺はそれを全て受け止めてやろう。たとえそれが、この身を滅ぼすことになったとしても…俺は、その運命をも受け入れる。
「――…いただきます」
言葉が聞こえた刹那、首筋に強い痛みが走った。首の肉を噛み千切られるかと思うくらいの痛みだった。
そして離されたと思ったら、そこを舐められる。それはまるで傷を癒やすかのようにも感じるし、本当に味わってるようにも感じた。
「……痛い?」
「まぁ…」
「ごめん…」
そう言って優しく甘噛みされた。
正直、少しでも噛まれるとかなり痛いけど…満足げな表情を見せられたら文句は言えない気が…する…
「…それで味は、」
味はどうだった?
そう尋ねたら、クスッと笑われた。
「…うん、美味しかった。お前の匂いと味を同時に感じられるなんて、幸せ」
「…そか」
「うん。でも、赤くなっちゃった…血も出てる、し…」
「あぁ…別に良いよ。なんかキスマークみたいで、良いかなみたいな…」
「ぇ…」
「お前に痕を付けられるなんて初めてだし」
俺はそう言って、俺の首筋を噛んだ口を指でなぞった。
…こんな可愛い口があんな強い力で俺を噛んだのか…なんて思ったら、自然と笑みが零れた。
「どうしたの?」
「…ううん」
誰かに強く求められるって…幸せだな。
……それは素直な気持ちだった。
少し血が出てることさえ嬉しい。
「もっと、求めて来て良いぞ」
「え、良いの…?」
「あぁ、お前になら構わないよ」
「……俺のこと愛してる?」
「勿論、他の誰よりもな」
「俺も、愛してるよ」
「知ってる。だって」
お前は…
俺しか、愛せないんだから。
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